■『百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん』の音響  戸崎おとめ
■ 公演データ ■
 ■ 主催
 KUDAN Project、パフォーミング・アーツ・フェスティバルあいち
   共催  少年王者舘てんぷくプロtsumazuki no ishi
   日程  2005年8月10日〜13日

   会場

 愛知県勤労会館
 
 ■ 原作
 しりあがり寿
   脚本・演出/演出補
 天野天街 (平成17年度名古屋演劇ペンクラブ賞受賞)西田シャトナー 
   振付
 夕沈
   作曲
 珠水
   美術
 田岡一遠
   映像
 浜嶋将裕
   照明
 小木曽千倉
   音響プラン/オペレート 
 戸崎おとめ/細川ひろめ・堀場眼助 (マナコプロジェクト)
   衣裳
 田村英子
   人形
 山田俊彦
   舞台監督
 井村 昂
   製作
 小熊秀司 (平成17年度名古屋市芸術奨励賞受賞)・安住恭子
 

chirashi


 2005年8月に、名古屋で上演された『百人芝居◎真夜中の弥次さん喜多さん』の音響プランを担当しました。
 演出は名古屋の劇団少年王者舘の天野天街さん。私は1993年から数年前までここの劇団員だったので、随分長いお付き合いになります。

 この公演は、出演者が161名、スタッフが100名と大規模で、劇場は客席数が1488席ある愛知県勤労会館です。出演者は愛知・東京・大阪の俳優に加え、一般公募の100名の中には外国人もいます。原作者のしりあがり寿さん、知久寿焼さねよしいさ子さんらの日替り出演もありました。遠来のお客さんは愛知万博の開催中だった為、宿探しに苦労したようです。

 恐ろしい事に、台本の完成が初日の2日前と大幅に遅れ、現場は大変な事態となりました。私は後半の音作りが間に合わず、場当たり中も客席で編集作業を行い、バックアップのディスクも作れぬまま初日に突入しました。40分遅れで始まった初日の本番は、問題点も有りましたが、161名の出演者のエネルギーにより、とても素晴らしい舞台に仕上がりました。上演時間は約2時間半。沢山のお客さんを迎え、4日間の本番はあっという間に終わりました。

 原作はしりあがり寿の漫画。2005年には初監督の宮藤官九郎が映画化し話題となった。KUDAN Project では2002年に二人芝居として上演。2003年には、中国公演も行っている。"弥次喜多"の2名の配役は共通だが、本公演は新作。
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  イントレ上の48人が持っているプロペラは回転している

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手前左より、小熊ヒデジ 西田シャトナー 寺十吾

 

■ 音響機材について

 メインスピーカーはviking audioのMCW-2とMCW-18のセットを持ち込みました。モニタースピーカーやマイクに関しては、台本が無い為、どのシーンで誰に(どのエリアに)必要かが分からず、なかなか決定出来なくて苦労しました。

 モニタースピーカーは、161名の出演者の出はけの邪魔にならず、移動する舞台装置に干渉しない位置を見つけるのが難しかったのですが、演出部と相談して、固定のセットであるイントレの1段目にBEHRINGERのB1520を仕込み、舞台袖にはスタンド立てでElectro-VoiceのSx200を置きました。袖中はシーンによっては出演者が突っ込んで来る為、その際は音響スタッフがスピーカーに付く事で安全を確保しました。5段組みのイントレに登って唄うシーンも有り、高いエリアの出演者の為に、メインスピーカーの上に、舞台向けでBEHRINGERのB1520を置いて音楽を返しました。

■ 台詞と動きへの対応

 マイクは舞台の前面にBEHRINGERのB5を2本、クロスしてスタンド立てしたものと、舞台上方のバトンからAKGのC417Vを3本吊ったものでセリフを拾いました。主人公の"弥次喜多"の2人にはワイヤレスマイクを付けてもらい、大人数と対峙する時や、音楽の中でのセリフの際に使用しました。それ以外のシーンではワイヤレスを付けてない役者とのやりとりを考慮して、拾いのマイクを使用しました。

 再生機はMD3台とサンプラーを1台使用しました。役者の動きに合わせる音が多かったのでサンプラーを多用しました。全体の音のきっかけは150位です。

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頭に被っているのは "すいかづら"
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仕込風景:上手花道

■ 音響プランについて

 指定の曲以外は、演出から要望を聞いて、私の方で候補曲を集めたものを渡し、その中からお互いが選曲をするというやり方を取りました。候補曲を選ぶ際には、印象が単一な曲は避けるように心がけました。メインテーマである『粒宮城(りゅうぐうじょう)』というオリジナル曲は多用する為、複数のヴァージョンを用意して、いろいろな表情が出るようにしました。

 SE(効果音)は、ト書きの音を用意するのが精一杯で、初日に間に合わない物もあり、最後まで作り続けました。劇中に "Fax"の音が出てくるのですが、演出家のイメージと違っていた為、初日の朝、家族を巻き込んで録音し直しました。
 また映像で東海道各所の地名の文字が乱れ出るなか、白い"ワク"を持った役者が交錯したり、"ノボリ"を持った役者が行進したりするシーンがありました。そこに風の音を入れましたが、他の季節の音も入れて作り込みたかったのに、間に合わなかった事を申し訳なく思います。

■ドスンッ! って音、心で聞こえた ── ダレモミタコトノナイ演劇、大名古屋に出現!

■ 公演を終えて

 仕事の進め方が後手にまわる事が多かったので、もっと予測して動ければと思いました。また普段から作品の気配や匂いのようなものを音で表現したいと思っていますが、今回はト書きの音を用意するのに精一杯になってしまった事を悔しく思います。

 いろいろ課題も残りましたが、大変な状況の中何とか無事に終われたのは、協力してくれた7名の音響スタッフのおかげです。今回の貴重な経験を今後の仕事に生かして、これからも頑張りたいと思います。

写真撮影:宮本ナナ

■ 関連サイト:KUDAN ProjectBACK STAGE REPORTマナコ由来 4

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  イントレ前面の障子柄の扉を開くと奥が見える仕掛けになっている

 (ステージ・サウンド・ジャーナル 2005年12月号より)