『Pの間』 日本舞台美術家協会/JATDT 舞台美術展 2014

P_no_ma-1会場入口

 去る3月21日〜30日に、日本舞台美術家協会展が東京芸術劇場にて開催されました。前回の2007年の世田谷文化生活情報センター以来、7年振りとなります。実行委員長は土屋茂昭氏。

 10日間の会期中は、作品・模型・写真・資料などの展示のほか、対談や座談、連日の講座やワークショップと盛沢山の内容です。さらに同会主催のコンペによる舞台美術賞の公開審査会も開催されました。選考に残った応募者は審査員と観衆を前にプレゼンテーションをしました。

 展覧会の名称は「Pの間」。PLAY/発想、PLAN/共有、PLEASURE/喜びがキーワードです。閻魔の"閻"にも似たロゴが印象的です。空間にこだわる舞台美術家達だけに、会場造りにもその熱情と美意識が遺憾なく発揮されていました。

 会場は同劇場5階のコンサートホールに隣接するギャラリーで、100坪を越える広さです。「3つのP」に対応する3つのエリアがあり、床や壁も存分に手を入れて作り込んでありました。「PLAN」のエリアには美術家の仕事場=工房が再現してあります。

P_no_ma-5会場全体の模型とスケッチ

P_no_ma-7PLAYエリア

 中程に「Pの間」があり、座談やワークショップなど交流の場となりました。設営には多数の大道具会社や職人が協力しました。拓人の松本邦彦さんも、ドロップ画を書き下ろして華を添えていました。

 印刷物は元より、展示物・展示手段・展示会場のどれを見ても、費やされたであろう膨大な情熱と労力に圧倒されます。審査会の受賞作も合わせて展示されました。課題戯曲は『銀河鉄道の夜』(脚本=広瀬常敏)。公演では当然のごとく出現する舞台装置や衣裳の創作の背後には、目に見えない沢山の営みと思いの丈があるのだと思い知りました。

 対談・座談は3つ組まれました。ホストは美術家で、ゲストが衣裳家・照明家・音響家という3組です。堀尾幸男氏とひびのこづえさん、伊藤雅子さんと照明家3名、そして石井強司氏と私です。「音響よもやま話」ということでしたが、話だけでは "間" が持たないと思い、音ネタを用意しました。

 主に国内中心の脱音楽のドキュメンタリー物のLPやCD。話の折々に関連した音源を聞きながら進行しようという趣向です。音の再生は "PLAY" にもつながります。開演15分前から文学座アトリエ公演の『ぬけがら』(2005、作=佃典彦) の「客入れ」を流しました。流行歌とドキュメンタリー音による編年風の構成になっています。「昭和」の音の同時代史です。

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対談風景

P_no_ma-4お茶飲み座談会

 石井さんと仕事で初めてお会いしたのは、1988年の『大恋愛』(演出=木野花) という作品でした。近年は数年に一度文学座でご一緒します。この企画は、私が桜美林大学の舞台芸術研究所の広報誌に書いた原稿が縁となりました。色々な音を題材とした、「虚録実音」という題名の連載です。

 受付は若手からベテランの協会員が入れ替わりに担当。来場者は千名を越える盛況でした。会期中の3月27日に朝倉摂さんが逝去され、『唐版 滝の白糸』(2013) の展示の傍らに訃報が掲示されました。謹んでご冥福をお祈りします。

 

 

 当日聴いた音源の内、舞台関係のものを紹介します。

写真提供:日本舞台美術家協会

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hamlet

■「よみがえる自作朗読の世界」
    ──ハムレット生死疑問独白の場
      /作:シェークスピア、翻訳・朗読:坪内逍遥
   ・SP原盤/1933発売
   ・CD番号:COCP-33260/MONO

  ※他に北原白秋、与謝野晶子、西条八十、高浜虚子、萩原朔太郎ら 

jugyo

■『授業』
  ・作:イヨネスコ
  ・出演:中村伸郎、中村真理、平木久子
  ・録音:1977/渋谷ジァンジァン十時劇場
  ・LP番号:JJ 103NN

  ※1972年初演、毎週金曜日の夜10時開演、1982年まで続いた  
   ロングラン公演、配役を替えて1987年まで続いた

strip

■「まいど…日本の放浪芸」──オールA級特出特別大興行
  ・取材・構成・ナレーション:小沢昭一
  ・出演:一条さゆり、桐かおる
  ・1977録音/LP原盤
  ・CD番号:VICG-60249〜52

  ※小沢昭一が訪ねた「日本の放浪芸」シリーズ第4集、ストリップ 

terayama

■「寺山修司 作詞+作詩集」
  ──短歌/作・朗読:寺山修司
  ・発売:2006
  ・CD番号:MHCL-275〜6

  ※他にカルメン・マキ、J・Aシーザー、緑魔子、蘭妖子、萩原朔美ら

(ステージ・サウンド・ジャーナル 2014年5月号より)