■『明治の柩』公演に寄せて 追悼 高瀬久男 |
(撮影:飯田研紀) |
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近代化の推し進む明治という時代のきしみの中で、正義を貫いて生きることの困難さが、社会主義思想家やキリスト教信者らとの議論を交えて描かれる。天皇制下、青年農民との軋轢、権力側の切り崩し、男女の機微も絡み、運動内部の矛盾も映し出される。 |
『明治の柩』チラシ |
信濃町の文学座アトリエは、防音設備は無完備。近くの慶応病院に向かう救急車のサイレンがよく聞こえる。雨が降ろうものなら録音中止である。稽古休みの5月25日に録音。 |
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稽古でトランペットを当てたが、単音では物足りない。奏者の了解を得て、重ねたり音程を変えたり一部手を加えた。「あれ」の1回目は"レ"のみの組み合せ。判然としないものが段々「君が代」の体を成し、最後はアドリブという構成とした。
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高瀬さんは、福島、辺野古など足尾と同じく住民が国家や企業と対立する現代の問題へとつなげる意図があった。 |
重機の衝撃音と共に「君が代」の旋律を中断し、やがてくる敗戦による日本の国家主義の崩壊を表徴した。 |
舞台模型:島 次郎 |
(撮影:益永 葉) |
終幕は主人公の葬儀の場。中央に柩が置かれお経が流れる。田中を追った刑事(坂口) と妻(山本郁子) が独白する。高瀬さん本人は無宗教だが、真言宗豊山派でとり行われた祖父の葬儀の荘厳さが忘れられないと語っていた。 |
題名に柩とあるのは何とも皮肉である。久男の久は匚構えに入ってしまった。国構えと違い、匚構えは一辺が開いている。不屈の故人はここから戻ってくるのではないか。 |
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■ 高瀬久男 略歴
■文学座公演『明治の柩』
●2015年6月11日〜24日 あうるすぽっと●出演:石田圭祐/山本郁子/木場允視/上川路啓志/南一恵/
亀田佳明/福田絵里/石川武/藤側宏大/千田美智子/
得丸伸二/加納朋之/佐古真弓/椎原克知/坂口芳貞/
沢田冬樹/清水圭吾/高塚慎太郎/駒井健介●スタッフ
作:宮本 研
演出:高瀬久男
美術:島 次郎
衣裳:前田文子
照明:沢田祐二 + 操作:阪口美和
音響:藤田赤目 + 操作:鈴木三枝子
トランペット演奏:渡辺隆雄
殺陣:栗原直樹
演出補:生田みゆき
舞台監督:寺田 修
制作:矢部修治、大野順美
票券:最首志麻子
(ステージ・サウンド・ジャーナル 2015年7月号より)